有限責任事業組合契約に関する法律施行規則(平成十七年七月二十九日経済産業省令第七十四号)
有限責任事業組合契約に関する法律(平成十七年法律第四十号)の規定に基づき、有限責任事業組合契約に関する法律施行規則を次のように制定する。
- 第一章 総則(第一条)
- 第二章 電磁的記録等(第二条―第四条)
- 第三章 業務執行の決定方法(第五条)
- 第四章 会計帳簿の記載方法等(第六条―第十三条)
- 第五章 貸借対照表等の記載方法等
- 第一節 総則(第十四条―第十九条)
- 第二節 貸借対照表(第二十条―第二十七条)
- 第三節 損益計算書(第二十八条―第三十四条)
- 第四節 附属明細書(第三十五条)
- 第六章 組合財産の分配等(第三十六条―第三十九条)
第一章 総則
(用語)
第一条 この省令において使用する用語は、有限責任事業組合契約に関する法律(平成十七年法律第四十号。以下「法」という。)において使用する用語の例による。
第二章 電磁的記録等
(電磁的記録)
第二条 法第四条第二項に規定する経済産業省令で定める電磁的記録は、磁気ディスクその他これに準ずる方法により一定の情報を確実に記録しておくことができる物をもって調製するファイルに情報を記録したものとする。
(署名又は記名押印に代わる措置)
第三条 法第四条第二項に規定する経済産業省令で定める措置は、電子署名(電子署名及び認証業務に関する法律(平成十二年法律第百二号)第二条第一項に規定する電子署名をいう。)とする。
(電磁的記録に記録された事項を表示する方法)
第四条 法第三十一条第六項第二号に規定する経済産業省令で定める方法は、当該電磁的記録に記録された事項を紙面又は出力装置の映像面に表示する方法とする。
第三章 業務執行の決定方法
(総組合員の同意を要しない重要な財産の処分及び譲受け並びに多額の借財)
第五条 法第十二条第二項の経済産業省令で定めるものは、次に掲げるものとする。
一 その価額が組合の純資産額(純資産額が二十億円を上回る場合には、二十億円。次号において同じ。)を下回る財産の処分及び譲受け(当該処分又は譲受けによる組合の財産上の損害の額が組合の純資産額から組合員による出資の総額(当該処分又は譲受けの日までに法第三十四条第二項の規定による組合財産の分配があったときは、組合員による出資の総額から同条第三項の規定により組合契約書に記載された額の合計額を控除して得た額)を控除して得た額を上回るものを除く。)
二 その価額が組合の純資産額を下回る借財(当該借財により組合の借入金の額が組合の純資産額以上となるものを除く。)
第四章 会計帳簿の記載方法等
(会計帳簿の記載方法)
第六条 法第二十九条第一項の規定により作成する組合の会計帳簿の記載方法は、この章の定めるところによる。
(財産の評価)
第七条 組合の会計帳簿に記載すべき財産に付すべき価額については、商法施行規則(平成十四年法務省令第二十二号)に定めるところによる。
(金銭以外の財産による出資の評価)
第八条 金銭以外の財産を出資の目的とするときは、出資の価額として、当該財産の市場価格(市場価格がない場合には、一般に合理的と認められる評価慣行により算定された価額。次条第一項において同じ。)を付さなければならない。
2 前項の規定にかかわらず、市場価格がない場合であって、一般に合理的と認められる評価慣行が確立されていない財産については、出資の価額として、当該財産を出資する者の当該出資の直前における当該財産の適正な帳簿価額又は会計帳簿上当該財産が存在することを示す備忘価格を付すものとする。
(金銭以外の組合財産を分配する場合の分配金の価額)
第九条 金銭以外の組合財産を分配するときは、分配金の価額として、当該組合財産の市場価格を付さなければならない。
2 前項の規定にかかわらず、市場価格がない場合であって、一般に合理的と認められる評価慣行が確立されていない組合財産については、分配金の価額として、当該分配の直前における当該組合財産の適正な帳簿価額を付すものとする。
(会計帳簿の作成方法)
第十条 法第二十九条第一項の組合の会計帳簿は、組合が成立したとき並びに組合員の加入及び組合員による新たな出資があったとき(第二号に該当する場合を除く。)は、速やかに、次の各号に掲げる場合には、当該各号に定める日から二月以内に作成しなければならない。
一 組合の事業年度が終了したとき 当該事業年度終了の日
二 組合員の加入、組合員による新たな出資その他の事由による損益分配の割合の変更(以下「損益分配の割合の変更」という。)があったとき 当該損益分配の割合の変更の日
三 組合員の脱退があったとき 当該組合員の脱退の日
四 組合財産の分配があったとき 当該組合財産の分配の日(以下「分配日」という。)
2 法第二十九条第一項の規定により組合の会計帳簿を作成した組合員は、当該組合の会計帳簿に署名し、又は記名押印しなければならない。
(会計帳簿の記載事項)
第十一条 法第二十九条第二項に規定する経済産業省令で定める事項は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める事項とする。
一 組合が成立したとき並びに組合員の加入及び組合員による新たな出資があったとき(第三号に該当する場合を除く。) 組合の成立の日又は組合員の加入若しくは組合員による新たな出資の日における各組合員が履行した出資の価額及びその合計額
二 組合の事業年度が終了したとき 次に掲げる事項
イ 当該事業年度終了の日における資産の部、負債の部及び純資産の部(以下この条において「貸借対照表各部」という。)の各科目の金額並びに当該金額の組合員別の内訳
ロ 当該事業年度における営業損益の部及び営業外損益の部並びに特別損益の部(以下この条において「損益計算書各部」という。)の各科目の金額並びに当該金額の組合員別の内訳
ハ 当該事業年度中に損益分配の割合の変更又は組合員の脱退があったときは、最終の損益分配の割合の変更又は組合員の脱退の日(次項の規定により当該最終の損益分配の割合の変更又は脱退の日の前後一月以内の日を基準日として定めたときは、当該基準日。次号ロにおいて同じ。)から当該事業年度終了の日までの損益計算書各部の各科目の金額及び当該金額の組合員別の内訳
三 損益分配の割合の変更又は組合員の脱退があったとき 次に掲げる事項
イ 当該損益分配の割合の変更又は組合員の脱退の日の前日における貸借対照表各部の各科目の金額及び当該金額の組合員別の内訳
ロ 当該損益分配の割合の変更又は組合員の脱退の日の属する事業年度開始の日(当該事業年度中に既に損益分配の割合の変更又は組合員の脱退があったときは、最終の損益分配の割合の変更又は組合員の脱退の日)から当該損益分配の割合の変更又は組合員の脱退の日の前日までの損益計算書各部の各科目の金額及び当該金額の組合員別の内訳
ハ 組合員の加入又は組合員による新たな出資の日における各組合員が履行した出資の価額及びその合計額(組合員の加入又は組合員による新たな出資があったときに限る。)
四 組合財産の分配があったとき 次に掲げる事項
イ 当該分配に係る組合財産の内容、分配金の価額及び当該分配金の価額の組合員別の内訳
ロ 当該分配に係る組合財産の分配日における帳簿価額及び当該帳簿価額の組合員別の内訳(金銭以外の組合財産の分配があったときに限る。)
2 前項第三号に掲げる場合において、やむを得ない事情があるときは、当該損益分配の割合の変更又は組合員の脱退の日の前後一月以内の日を基準日として定め、同号イ及びロに掲げる事項に代えて、次に掲げる事項を記載することができる。
一 基準日の前日における貸借対照表各部の各科目の金額及び当該金額の組合員別の内訳
二 当該損益分配の割合の変更又は組合員の脱退の日の属する事業年度開始の日(当該事業年度中に既に損益分配の割合の変更又は組合員の脱退があったときは、最終の損益分配の割合の変更又は組合員の脱退の日(この項の規定により当該最終の損益分配の割合の変更又は組合員の脱退の日の前後一月以内の日を基準日として定めたときは、当該基準日))から基準日の前日までの損益計算書各部の各科目の金額及び当該金額の組合員別の内訳
(会計帳簿の写しの交付)
第十二条 法第二十九条第三項の規定による各組合員に対する会計帳簿の写しの交付は、組合が成立したとき並びに組合員の加入及び組合員による新たな出資があったとき(第二号に該当する場合を除く。)は、前条第一項第一号に定める事項を記載した書類の写しを速やかに、次の各号に掲げる場合には、当該各号に定める書類を当該各号に掲げる事由が生じた日から二月以内に交付することにより行うものとする。
一 組合の事業年度が終了したとき 同項第二号に定める事項を記載した書類の写し
二 損益分配の割合の変更又は組合員の脱退があったとき 同項第三号に定める事項を記載した書類の写し
三 組合財産の分配があったとき 同項第四号に定める事項を記載した書類の写し
(会計帳簿の保存)
第十三条 法第二十九条第四項の規定による組合の会計帳簿及び組合の事業に関する重要な資料の保存は、組合の主たる事務所における保存又は総組合員の過半数をもって定めた者による保存の方法により行うものとする。
第五章 貸借対照表等の記載方法等
第一節 総則
(貸借対照表等の記載事項等)
第十四条 法第三十一条第一項及び第二項並びに法第四十四条第一項の規定により作成する組合の貸借対照表及び損益計算書並びに附属明細書に記載すべき事項及びその記載の方法は、この章の定めるところによる。
2 貸借対照表の記載方法については、この章の定めるところによるほか、商法施行規則に定めるところによる。
(作成の基本原則)
第十五条 貸借対照表及び損益計算書並びに附属明細書への記載は、組合の財産及び損益の状態を正確に判断することができるよう明瞭にしなければならない。
(会計方針の注記等)
第十六条 資産の評価の方法、固定資産の減価償却の方法、重要な引当金の計上の方法その他の重要な貸借対照表又は損益計算書の作成に関する会計方針は、貸借対照表又は損益計算書に注記しなければならない。ただし、一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行によりその採用が原則とされている会計方針については、この限りでない。
2 貸借対照表又は損益計算書の作成に関する会計方針を変更したときは、その旨及びその変更による増減額を貸借対照表又は損益計算書に注記しなければならない。ただし、その変更又は変更による影響が軽微であるときは、その旨又は変更による増減額の記載を要しない。
3 前項の規定は、貸借対照表又は損益計算書の記載の方法を変更したときについて準用する。
(注記の方法)
第十七条 貸借対照表又は損益計算書に記載すべき注記は、貸借対照表又は損益計算書の末尾に記載しなければならない。ただし、他の適当な箇所に記載することを妨げない。
2 特定の科目に関連する注記については、その関連が明らかになるように記載しなければならない。
(追加情報の注記)
第十八条 この節に定めるもののほか、貸借対照表又は損益計算書により組合の財産及び損益の状態を正確に判断するために必要な事項は、貸借対照表又は損益計算書に注記しなければならない。
(金額の表示の単位)
第十九条 貸借対照表及び損益計算書並びに附属明細書に記載すべき金額は、千円単位をもって表示することができる。
第二節 貸借対照表
(区分)
第二十条 貸借対照表には、資産の部、負債の部及び純資産の部を設け、各部にはその部の合計額を記載しなければならない。
(資産の部)
第二十一条 資産の部は、流動資産、固定資産及び繰延資産の各部に区分し、固定資産の部は、更に有形固定資産、無形固定資産及び投資その他の資産の各部に区分しなければならない。
2 前項の各部は、現金及び預金、受取手形、建物その他の資産の性質を示す適当な名称を付した科目に細分しなければならない。
(組合員に対する金銭債権)
第二十二条 組合員との間の取引による組合員に対する金銭債権は、その総額を注記しなければならない。
(負債の部)
第二十三条 負債の部は、流動負債及び固定負債の各部に区分しなければならない。
2 前項の各部は、支払手形、買掛金その他の負債の性質を示す適当な名称を付した科目に細分しなければならない。
(組合員に対する金銭債務)
第二十四条 組合員に対する金銭債務は、その金銭債務が属する科目ごとに、他の金銭債務と区別して記載しなければならない。ただし、その金銭債務が属する科目ごとに、又は二以上の科目について一括して、注記することを妨げない。
(純資産の部)
第二十五条 純資産の部は、出資金、累計利益金又は累計損失金及び累計分配金の各部に区分しなければならない。
(その他純資産の部に計上すべきもの)
第二十六条 前条の規定にかかわらず、資産につき時価を付すものとした場合における当該資産の評価差額金(当期純利益又は当期純損失として計上したものを除く。)は、純資産の部において評価差額金の部に区分して、その内容を示す適当な名称を付した科目に細分しなければならない。
(分配可能額)
第二十七条 法第三十四条第一項に規定する分配可能額は、注記しなければならない。
第三節 損益計算書
(区分)
第二十八条 損益計算書には、経常損益の部及び特別損益の部を設け、経常損益の部は、営業損益の部及び営業外損益の部に区分しなければならない。
(経常損益の部)
第二十九条 営業損益の部及び営業外損益の部は、売上高、売上原価、販売費及び一般管理費その他の収益又は費用の性質を示す適当な名称を付した科目に細分しなければならない。
(営業損益)
第三十条 営業収益の合計額と営業費用の合計額との差額は、営業利益又は営業損失として記載しなければならない。
(組合員との取引高)
第三十一条 組合員との取引による取引高の総額は、営業取引によるものとそれ以外のものとを区分して、注記しなければならない。
(経常損益)
第三十二条 第三十条の営業利益又は営業損失の額に、営業外収益の合計額と営業外費用の合計額を加減した額は、経常利益又は経常損失として記載しなければならない。
(特別損益の部)
第三十三条 特別損益の部には、前期損益修正損益、固定資産売却損益その他の異常な利益又は損失について、その内容を示す適当な名称を付した科目を設けて記載しなければならない。
(当期純損益)
第三十四条 第三十二条の経常利益又は経常損失の額に、前条の利益の合計額と損失の合計額を加減した額は、当期純利益又は当期純損失として記載しなければならない。
第四節 附属明細書
(附属明細書)
第三十五条 附属明細書には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
一 出資金、累計利益金又は累計損失金及び累計分配金の増減
二 長期借入金及び短期借入金の増減
2 前項各号に掲げる事項のほか、附属明細書には、貸借対照表及び損益計算書の記載を補足する重要な事項を記載しなければならない。
3 貸借対照表又は損益計算書の作成に関する会計方針を変更したときは、附属明細書にその変更の理由を記載しなければならない。ただし、その変更が軽微であるときは、この限りでない。
第六章 組合財産の分配等
(組合員の損益分配の割合)
第三十六条 法第三十三条の規定により組合員の損益分配の割合に関する別段の定めをする場合には、様式第一により書面を作成し、組合員の全員がこれに署名し、又は記名押印しなければならない。
2 前項の書面は、電磁的記録をもって作成することができる。この場合において、当該電磁的記録に記録された情報については、第三条に規定する署名又は記名押印に代わる措置をとらなければならない。
3 組合契約書において組合員の損益分配の割合に関する別段の定めをする場合には、第一項の規定にかかわらず、組合契約書に次に掲げる事項を記載し、又は記録すれば足りる。この場合において、当該組合契約書には、組合員の全員が署名し、又は記名押印しなければならない。
一 組合員の出資の割合
二 組合員の損益分配の割合及びその理由
三 前号の損益分配の割合の適用開始の年月日が組合契約の効力が発生する年月日と異なる場合には、当該適用開始の年月日
4 前項第二号の組合員の損益分配の割合の理由は、同項第一号の組合員の出資の割合と異なる損益分配の割合を定める理由及び当該損益分配の割合の合理性を明らかにする事由を含むものでなければならない。
(分配可能額の算定方法)
第三十七条 法第三十四条第一項に規定する経済産業省令で定める方法は、分配日における純資産額から三百万円(組合員による出資の総額が三百万円に満たない場合には、組合員による出資の総額)を控除する方法とする。
(組合の剰余金に相当する額の算定方法)
第三十八条 法第三十四条第二項に規定する経済産業省令で定める方法は、分配日における純資産額から組合員による出資の総額(分配日までに法第三十四条第二項の規定による組合財産の分配があったときは、組合員による出資の総額から同条第三項の規定により組合契約書に記載された額の合計額を控除して得た額)を控除する方法とする。
(剰余金に相当する額を超えて組合財産を分配する場合の組合契約書への記載)
第三十九条 法第三十四条第三項の規定による組合契約書への記載は、分配する組合財産の帳簿価額から同条第二項の額を控除して得た額のほか、次に掲げる事項を記載することにより行わなければならない。
一 分配日
二 分配日までに同項の規定による組合財産の分配があったときは、当該組合財産の帳簿価額から同項の額を控除して得た額に同条第三項の規定により組合契約書に記載された額の合計額を加えた額
2 法第三十四条第三項の規定による組合契約書への記載は、分配日から二週間以内に行わなければならない。
附 則
この省令は、法の施行の日(平成十七年八月一日)から施行する。
[2011年2月8日 法務省のホームページを基に作成]